グリーとディーエヌエーによるテレビCMの多さの「なぜ」を考えてみる

http://www.garbagenews.net/archives/1506534.html

※以下記事をそのままコピペ。



先に【テレビCM出稿量の上位陣をグラフ化してみる(2010年7月分)】の考察部分「個別案件」でこの数か月の間、携帯向けソーシャルメディアの運営企業【グリー(3632)】と【ディーエヌエー(2432)】のテレビCM出稿量の多さを挙げたところ、当方の想像以上の反響があった。そこで今回はこの「個別案件」についてもう少し補足・考察をしておくことにする。

「一人でも多くの人に自社サービスを知ってもらいたいため」「話題のメディアであることを広域にアピールするため」「従来メディアの筆頭に位置するテレビに大量の広告を投入することで社会的な認知度を高めるため」「広告費にある程度余裕が出来たので、テレビCMの出稿単価が下がっているこの時期に『よいお買いもの』をした」なども理由として挙げられる。しかしそれだけでは少々裏付けとしては弱い。

そこで色々と調べたところ、見つけた資料がM1・F1総研が2010年5月に発表した【PCサイトユーザーとモバイルサイトユーザーの違い(PDF)】という調査結果。1都3県の18〜34歳男性1050人(実質的にM1層:20〜34歳男性(1000人))にインターネット経由で2009年11月に尋ねたものだ。それによるとパソコン派(無くなったら困るものでパソコン>>携帯電話とした人)とモバイル派(無くなったら困るもので携帯電話>>パソコンとした人)において、平日に自宅で一番長い時間していることには大きな違いが見られる。


パソコン夢中派は当然ながらパソコンでインターネットをする時間が一番長い。これは分かる。問題なのはモバイル夢中派で、「テレビ視聴」が一番長いという結果が出ている。モバイル夢中派が平日に一番長時間接するのがテレビならば、そのテレビへの露出機会を増やせば、モバイル派への認知度を効率的に高められる。この点において、グリーやディーエヌエーの戦略が見えてくる。

テレビを観ている人は同時にモバイル夢中派である可能性が高い。だから、自分達のお客になってくれる可能性も当然高くなる。他の媒体、新聞や雑誌、パソコンのウェブ上に広告を打つより高成果が期待できるわけだ。例えるなら、「就職説明会の会場でガンダムグッズを売る」よりも、「お台場の等身大ガンダムの展示場でガンダムグッズを売った」方が遥かに成果が出るのと同じようなもの。

もう一つ、同資料ではテレビと携帯電話の相性の良さを指し示すデータがある。


モバイル夢中派はテレビを見ながら携帯電話経由でインターネットを利用する割合が非常に高い。その時にグリーやディーエヌエーのCMが目に留まり、気になるようなら、その場で即時チェックができる(右の写真にもあるように、「すぐに誘導したい自社サイトへ移行できる手段」を明記しているのもテレビCMの特徴の一つ)。

「テレビを観ながらケータイを操作する」という、いわゆる「ながら的行動」におけるテレビと携帯電話のリンケージは今件調査結果だけでなく、数多くのレポートでも指摘されている。例えば【「テレビ観る」その時あなたは何をする? ケータイでメールやサイト閲覧は6割超に】でも、テレビ視聴に対する並行行動の行動としてもっとも多いのは「携帯電話でメールやサイト閲覧」となっている。



元資料では「モバイル夢中派」は「情報収集能力ではやや劣るため、テレビのような受け身での情報収集源を重要視している」「モバイルサイトは利用しながら他の行動ができる『ながら利用』が可能なため、束縛のされにくいテレビがその対象となりやすい」などと解説している。「ながら利用」の際の個々の対象に対する注力度の希薄化について触れられていない(「ながら利用」をすれば当然個々への集中度・記憶残存率などは低下する。自動車運転中の携帯電話利用が禁止されているのもそれが理由)のはともかく、携帯電話を多用する人が、テレビも利用する可能性が高いことについては、まったくその通りであるといえる。

要はグリーやディーエヌエーは、より大きな効果を期待できる(テレビCM単価が急落中なので割安度も大きくなる)がために、テレビへ大々的にCMを展開しているわけだ。


テレビと携帯電話の相性の良さはあくまでも携帯電話を多用する若年層に限定されること、つまり本来テレビをこよなく愛し、同時に携帯とは疎遠になりがちな高齢者層とは相容れない関係にあることなど、考察すべきポイントもまだ多い。

ただし同時に、テレビなどの旧来メディアとインターネットや携帯電話などの新世代メディアが連動し、旧来メディアが今後も生き残るポイントも、そのあたりに潜んでいそうな気がしてならない。グリーやディーエヌエーのテレビCM大量投入による「成果」を知りたいところだが、こればかりは両社やテレビ局の特秘事項に違いなく、該当者たちの善意に期待するしかない(笑)。


※追記:
ただし現状でグリーやディーエヌエーの会員構成における年齢階層比を見ると、経年と共に少しずつ中堅、特に30歳以上が増加しているのも確認できる。この増加とテレビCM出稿量の増加がどのような関係にあるのかは、両社からは明らかにされていない。